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病院長ブログ

2023.02.04

執筆論文解説16 直腸癌治療 人工肛門  あり?/なし?

 最近でこそ(やっと)直腸癌術後遺症である低位前方切除後症候群(LARSラース)という疾患群が外科医に認知されていますが執筆当時は国内で唱えている人は少なかったです。当時勤務していた施設で行われて超低位直腸癌に対する肛門腹式直腸切除、経肛門Baker吻合術の長期QOLに関するアンケート調査の投稿論文です。超低位直腸癌は令和の時代は腹腔鏡下に行われるのですが昔は開腹下に行っていました。その吻合再建は腹腔内からは難しいため経肛門的になされることが少なくありません(特に狭骨盤の男性)。勤務先の施設では部長先生の方針で昔から通常、端-端吻合するところを側-端吻合(Baker法と言います)を行っていました。

対象は12例(女性3例)です(慎重に適応していました)。手術当時の年齢は中央値が57歳でした。術後一時的人工肛門は全例に造設していました。アンケートまでの術後観察期間は96か月です。アンケートでは排便回数は5回以上43%、便とガスの識別が付くのは43%、空振り排便(便がしたくなってトイレに行くが何も出ない)あり100%、残便感あり86%、排出困難感あり28%、5年以上経過していても便もれが起こる、という結果でした。術後の生活の質を下げることは長期経過していてもこのように残る事が分かりました。永久人工肛門にならないことに憧れて手術を受けられたのでしょうが結果的に期待を裏切っているのかも知れません。術後に生理現象でもある加齢による括約筋機能低下も念頭に置かねばなりません。令和の今、この手術よりももっと低位の癌にも手術が行われています。果たしてこのような手術は「誰が満足する手術なのか?」と疑問を抱きます。私自身なら社会的や職業的に受けないかもしれません(永久人工肛門を選択)。」