2024.10.12
執筆論文解説50 慢性便秘症(便排出障害)の診断に必要な排便造影検査
本論文は投稿論文です。数年前に学会で発表した内容です。便排出障害は執筆論文解説47で説明しています。この便秘は下剤を多種、多量に服用しても改善しないタイプです。巷では下剤を処方されるだけで済まされ、多くの患者さんは諦めています。
便排出障害には器質的なものと機能的なものがあります。今回検討の有所見です。
まずは本研究で有所見とした所見の一部の排便造影検査を示します。
図3 本来でしたら怒責時に肛門括約筋と肛門挙筋は弛緩するはずですがこの所見では肛門挙筋(恥骨直腸筋)が逆に収縮しています。
図4 図3と比べ恥骨直腸筋が収縮まではしなくとも弛緩しない(弛緩不全)状態。
図5 安静時、収縮時、怒責時を通じてまったく動かない状態。
図6 器質的な疾患がないのにも関わらず肛門管が開かない状態。
図7 排便終了後直腸上部が鋸歯状に見える状態。
表1 各所見とその頻度を示しています。
表2 表1を性別を分けて検討
男女差があるものには#や*、$の記号が付いています。
表3 器質性と機能性に分けて検討。
器質性は女性に、機能性は男性に、両者は女性に多いことが分かりました。
機能性は内圧検査などを追加しなければ最終診断できません。
結論:便排出障害の診断は女性は排便造影だけで診断できる可能性がありますが男性は内圧検査などの追加検査が必要です。
ということです。理由は本文にも書いていますが筋肉量、出産などが影響していると推測しました。
便秘の診断にはこのような専門的な検査がとても重要です。新規薬剤に飛びつくだけでは芸がないのではないでしょうか。